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ようやく見てきた『万引き家族』 77点 

 

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先日、電車でオッサンが「『万引き家族』は意味が分からなかった」と言っているのを聴いた。
確かに、一言でなにかテーマを言えるような作品ではなく、「家族の不確かさ」と言ったところで薄っぺらくなるような、多義的で重い映画だった。
そもそも、一言で映画を言い表すような風潮はよくない。それで言いつくせたら、映画なんか誰も作らんって!
まあでも、会話のとっかかりとしては有効かな・・・とも思うので、普段は黙っている。

 

ところで、近年「オッサン」という言葉が指す年代の幅が伸びており、憂慮している。
60代は昔なら「おじいさん」にカテゴライズされるはずだが、いまは若々しい70代もいて、70代を「オッサン」と呼んでもなんの違和感もない。
「オッサン」という言葉にはなんとなく「現役感(下ネタではありません、念のため)」があるが、その意味では高齢者でも「オッサン」の社会になったのかもしれない。
では、「オッサン」の下限はどうか。
これもまた難しく、由々しい問題だ。

どうみても20代の若者が、自分が歳をとったなあと言いたくて「もうおれらオッサンやもんな」と言うのを年に一度くらいは聴くが、それを耳にするたびにビンタ、あるいは鼻にパンチしてやろうかと思う。まあ、現代におけるオッサンの下限としては30後半から40代くらいが妥当だろう(女性の「おばはん」問題はここでは立ち入らない。しかし「オバタリアン」ってすごいネーミングセンスよな。ギャグとはいえ、いろいろ問題あるよな)。
まあ、要は「心が若ければいつまでもパワーはある」という『週刊現代』的な落としどころになってしまうのが悲しい。
というか、新聞広告でどうしても目に入ってくる『週刊現代』の「死ぬまでSEX」特集。

あれは浅ましいからやめてくれ。見たくないけど、目に入ってきて不愉快だ。

あれはセクハラにならないんですか!? だれか問題にしてくださいほんとうに。そういうのはこっそりと読むもので、ネットでじゅうぶん。ネットを触る習慣がない高齢者目当てに、SEX特集を前面に押し出している『週刊現代』は、もう終わったメディアなんだろう。
それなりに売れるから延命措置としては有効なんだろうけど、バカな社員編集者が定年まで喰いつぐ以外の意味はないし、あんな広告を載せるくらいなら(まあひどい広告は多いが)断ればいい。それで利益が減って、回りまわって部数が減ってもいいじゃないか。大部数を誇るような時代は終わったから、そういうのは読売の高齢者たちに任せとけばいい。クオリティペーパーが読みたいです。ま、ダウンサイズの方向ではまともな議論ができないのはどこの組織も同じかもしれんが・・・

 

話がどんどんそれるので、このあたりで強引に戻そう。

で、話はようやく『万引き家族
三度目の殺人』のときに感じた「これみよがし」の是枝演出は少なかったように思う(また話がそれるが、映画芸術ワースト10で『三度目の殺人』が1位だったようだが、理由が知りたい。しかし、バックナンバーを入手するほどではない)。
ないものねだりだが、「どうですかみなさん、さりげないでしょ?? さりげない演技でしょ~~???」と言われているような気は少ししたけれど。

『「血」の繋がりを国や自治体が認めたら親子』という考え方は近年急速に相対化されつつある(と思う)。
「親子」だけでなく「家族」にしても同様だ(と思う。「伝統的家族観」を振りかざす人間はバカかかわいそうな人だから笑顔で無視すべし)。
そう考えると「なぜそこまでして家族という形態を求めるのか?」という疑問が大きくなる。
最近ときおり「ゆるいつながり」というような言葉をきくが、「うん、それでいいやんか」と思える人は今後増えるはずだ。
そう考えるので、結果的に「疑似家族」の形態を数年間保った『万引き家族』の人たちが、不思議だった。
逸脱集団として描く必要はどれほどあったのかなと思う。
でも、近年社会問題の貧困や「再チャレンジ不可能な新自由主義的風潮」なども、監督としては描きたかったのか。

万引き家族」を構成する彼ら彼女らの過去は物語が進むにつれて次第に明らかになるが、そのすべてが説明されるわけではない。
このあたりの情報の出し入れが巧みだった。
たとえば、安藤サクラが演じる女性は、親に必要とされず、虐待さえされていたという過去が、お風呂の場面で示されていた。それにより、小さな女の子を子どものように育てている彼女の微妙な気持ちが微妙なまま観客に投げ出されていると感じた。
そこにこそ、この映画の見どころがある。そうした細部の積み重ねが素晴らしく、それを味わうのがよいのではないか(特に最後の安藤サクラの涙)。

あと、監督が日本政府(?)からのお褒めの言葉(勲章?)を辞退したことが話題になっているようだ(全然内容はしらないが毎日の報道をチラッとみた)。それを話題に取り上げるマスメディアの気が知れないので、ちゃんと読んでいない。
受けるも断るも自由だろう。「国の金をもらってるのに」式のコメントがあるようだが、それを報じる必要はないって。
議論の価値があると思うものを取材して乗せるべきだが、「受けるも断るも自由」という答えは揺るがないのだし、報じることで「敵」に塩を送っている気がするなあ。
むしろ、そういう人には「お前、映画ちゃんと観たんか?」って言えばいいと思うよ。映画の内容の議論をしたらいいのにね。