叙述トリック的な驚きがクセになる 『記憶の夜』85点
中学高校と電車通学だったので、ずいぶんと電車で本を読んだ。
朝の電車は子どもであっても座りたいものだと思うが、たいてい座れない。
座れないと眠れないし、つらいので、時間を忘れて夢中になれそうな本を選んでブックオフで買うということをしていた。
当時、駅前には紳士服青山を居抜いたブックオフがあったのだった。
で、夢中になれる本をどうやって選んでいたのかというと、文庫本の解説が頼りだった(高校生になると、『本の雑誌』を立ち読みするようになり、「頼り」が増えた)。
で、中学だったか高校だったかは覚えていないが、折原一のミステリー作品が、上記の「夢中になれる」という条件を満たしていた。
叙述トリックで知られる著者で、一作目(読んだのは『倒錯のロンド』だったはず)を読んでたいそう驚いたので、二作目からはトリックを見破ろうと思って読むようになった。
この「トリックを見破ろう」という読み方は、映画鑑賞にも引き継がれるようになり、だいたい誰もが行きつく以下のような推量をするようになった。それはつまり、意外な犯人と言われると、
・序盤に出て来る親しい友人か恋人(家族であることは稀)
・双子
・自分自身
を犯人候補に挙げてみるようになる。
トリックがわかることはまずないけれど、犯人は結構当たる(まあせいぜい5分の1くらいの確率だからあたるわな)。
前置きが長くなったが、ネットフリックスでみた『記憶の夜』が面白かった。
2017年の映画だから、オススメなどには表示されない。
ミステリー・サスペンス系で、ドラマではない韓国映画をみたいなあと思って、探していると出てきたのだった。
これ、ほんとうによくできていましたよ。
当時は話題になったんでしょうか? 私の周囲ではこの作品に言及する人はいませんでした。きっと話題になったんだと思います(でも、監督のチャン・ハンジュンさんの続編がない・・・)。
冒頭から、チープで安っぽい演出が続くんですが、それがちゃんと伏線になってるんですよね。
まさかそんな展開とはなあ・・・!! と楽しく騙されました。
つまり、冒頭で書いた叙述トリックの驚きを、うまく取り込んでいるんですよ。これ以上言うといわゆるネタバレになりますので控えておきますが・・・
と、ここでテンションを戻して、顔の問題に触れたい。
これはしばしば耳にするが、韓国映画界には、顔が良い人が多い。
アップに耐える表情というか、映画的顔面というか、とにかく顔。イケメンとかじゃなくても、味のある顔。顔がすべてだと言いたくなるくらい、顔が違う。
日本のテレビドラマを見ている人は一人もいないはずだから、ここでは措くとして、日本映画も福田雄一作品(毒にも薬にもならないムロツヨシと大泉洋)と三谷幸喜作品(悲しい気持ちになるが、中井貴一は大好きですよ)以外は、「一生懸命作っているなあとすごいなあ」と裏方の努力に感心させられることが多い。
ただ、肝心の演者の顔に魅力が欠ける。
製作委員会方式と、芸能プロダクションの悪い面が、そういうところに出ているのかなと。