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ちょっとテレビっぽいのが気になる「大作映画」 『密偵』75点

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ワーナー・ブラザーズ・コリアによる第一作。

韓国では三週連続で興行収入第一位ということで、たしかに力作にはなっていた。

ソン・ガンホイ・ビョンホンのスターと、若手最有力株のコン・ユというキャスティング。
日本統治時代の独立運動という大きなテーマ。
日本の警察で出世を続ける朝鮮人(ソン・ガンホ)の苦悩や、独立運動の闘士(コン・ユ)の強い意志などの見所も満載。しかし、その割にはどこか重厚さに欠けた。

思うに、脚本がごちゃごちゃしすぎている。
祖国と日本との間で引き裂かれるソン・ガンホのパートだけで良かったんじゃないか。
二重スパイになるかどうかの逡巡や、祖国を思う独立運動家たちを警察として取り締まらねばならないという悲しみだけで、じゅうぶん面白いはず。

しかし、映画はわりとコン・ユにも時間を割く。
コン・ユが大好きなので、それはそれでいいし、コン・ユが電車をいったりきたりする場面では『新感染』の良い思い出がよみがえって楽しかったのだけれど、結果としてはコン・ユとイ・ビョンホンの存在が映画の完成度をそいだと思う。
たとえば、次の場面。
コン・ユは表向きには写真館を経営している。思いを寄せる女性活動家がいて、彼女の写真を撮ってあげるのだが、自分が撮ったその写真が原因で、彼女が逮捕されてしまうという悲しい場面。
この場面は、もっと二人が互いを思い合う描写があれば、効いたと思うが、現状ではなんかとってつけたような感じしかしない。
さらに、独立運動に関わる秘密組織のなかに一人裏切り者がいるのだが、その人物が裏切っていたというショックが、全然伝わらない。なぜかというと、その人物に関する描写がほとんどなかったから。

とはいうものの、この独立運動家たちをしっかり描かないことには、終盤でソン・ガンホがその意思を継承して爆弾テロを決行するあたりの説得力も失われてしまう。
このあたりが、大作歴史エンターテイメントの難しいところか。

とにかく、人間描写の積み重ねが中途半端だったので、その結果、やたらと大仰で深刻な顔をしている俳優たちと、観客の距離が開いたままだった。

 

と、ネガティブなことを書いたが、ソン・ガンホの役どころには考えさせられる。

祖国が日本帝国の支配下にあるなかで、「自分はどのように生きるのが誠実なのか」と問い続けている表情が絶妙だった。

結果、ソン・ガンホ独立運動家たちの意思を継ぐわけで、その意味では韓国の「愛国」映画だと言える。ただし、「愛国」といえばなんでもかんでも悪いわけではない。植民地解放闘争を抱えた20性器の世界を再考するための手がかりに満ちたエンターテイメントだと評価して、65点をつけた。

あとはコン・ユが出ているのでプラス10点。今後もコン・ユという俳優には甘い態度で臨みたい。