ナチ+バイオハザードで、お手本のような既視感 『オーヴァーロード』68点
先日、クリストファー・ノーランの『インセプション』を再鑑賞したが、いい映画だったと再確認。映画館で観れるなら、いまでもお金払いたい。
さて、『オーヴァーロード』を観てきた。
あらすじはこんな感じ・・・
ノルマンディー上陸作戦の数時間前、ある部隊が行動を始めていた。
ナチ占領下のフランスに降り立って、ナチの通信塔(?)を破壊するという任務だ。
任務が成功すれば、ノルマンディー上陸作戦を有利に進めることができる。
しかし、目的の村に着くと、どうやら様子がおかしい。
ナチとの戦闘の中で、目的地の塔の地下に潜り込んだ主人公は、人体実験の現場を目撃する。
ナチは、最強の兵士を作るために、人体実験を繰り返していた・・・
このように要約したところで、すでにB級感がにじみ出る。
実際そのとおりで、それなりにハラハラ、それなりに爽快、俳優もそれなり、という「それなり映画」だった。
ただ、ホラー要素は薄い。静かなところで「ドーン!!」と大きな音が鳴ってびっくりさせるような、お化け屋敷演出にはややうんざり。
評価したいのは、敵役のナチ将校ピルー・アスベックさん。
『ゴースト・イン・ザ・シェル』で、「バトー」(両目に丸くて黒いルーペみたいなのをつけてるガタイのいいおっさん)を演じていたあの人である。
ナチの将校といえば、フィクションのなかでは、どんなに残忍でも許される。
というか、「どれだけ残酷な人間を作れるか競争」をするときのお題として、戦後は「ナチの将校」に焦点が当てられてきたように思える。
その点、序盤のアスベックさんは控えめでありきたりな悪に終始し、あまり見所がない。
しかし、後半は実験施設の謎の血清を打つことで、バイオハザードのボスみたいに変化する。
そこからの演技は迫真。
悪役を楽しんでいる感じが伝わってきた。
映画が現実を大きく離れて、ゾンビ映画になっていくのだが、残念ながらゾンビ描写も「それなり」。
最後の『アルマゲドン』的演出も「それなり」
どこかで観たことがあるような、演出ばかりで、新しさがない。
どこを切ってもB級で、世の中に存在しなくてもちっとも困らない映画だが、これを書いている私も「存在しなくてもちっとも困らない」人間なので、そう思うと、フシギと親しみが湧いてくる。
ニューヨークの図書館の映画を観た方が良かったかなあ・・・とやや後悔したが、それでも全然悪くない映画だとは思う。『ひるね姫』より100倍良い。