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めちゃくちゃ面白かった 『スリービルボード』95点

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アクションエンターテイメントやホラーや恋愛物語もいいけれど、どこか物足りないと感じることが多い。だいたい結末が何パターンかに絞られてしまうからだ。
小説でも、エンタメと文学では、それぞれ良いところがある。

でも、後者がやはり面白いと思うのは「先が読めない」点だ。

ミステリーやサスペンスで「先が読めない面白さ」という褒め方があるが、実際のところ、先が読めないのはいわゆる「文学」の方だろうと思う。

前置きが長くなったが、『スリービルボード』の面白さは、そういう面白さだ。

「文学的」というと、文学至上主義者と思われて嫌がる人がいるかもしれないが・・・

とにかく、本作は、何が起こるか全然予測できず、すべての画面に力があった。
本作のテーマの一つに「深い喪失体験からの回復」があると思うが、それも好みに一致した。

舞台はミズーリの田舎町。
娘を殺された主人公は、なけなしの金をはたいて田舎道の広告用看板を借りる。
三枚の大きな看板に、娘が殺された事実や、犯人を野放しにしたままの警察の無策に憤るメッセージ(署長を名指し)を掲載する。
糾弾される格好になった警察側だが、署長は部下に慕われる好人物。つまり、別にサボっているわけでも、悪意があるわけではなく、手がかりが本当にみつからないのだ。しかも署長は末期の膵臓癌(ちがったかも、とにかく癌)。
そうなると、署長の部下たちは、自分の慕う署長を糾弾する主人公に攻撃的にならざるを得ない。
この署長が自殺することで、物語の風向きが大きく変わる。
主人公は地域の住民から冷たい目で見られ、息子も学校で居心地が悪くなる。さらに、署長を慕っていた部下のディクソン(善良なバカで、両義的な役割を担う重要人物)が、ビルボードに火をつけるのだ・・・。

 

と、こういうふうに筋をまとめても、全然面白さを伝えられる気がしないので、あらすじはこれくらいにして、気に入った細部の描写を列挙しておきたい。
気に入ったのは、笑える点だ。爆笑というよりはクスッと笑える程度なのだが、そういう描写が、激しい暴力や日常的な差別意識を表れと同居している。このあたり、初期の北野武映画を彷彿とさせた(wikipediaによると、この監督は武映画が好きなのだそう)

たとえば、
ディクソンが深夜の警察署で、署長からの励まし手紙を読んでいる場面における、背後の火事。
ソファで眠るディクソンの母親の膝をあるくカメ。
主人公の元夫の新しい彼女が、若くてバカっぽいこと。
背の低い人(なんどか映画でみたことがある)に関する主人公たちの扱い。

主人公を見つめる鹿(ちょいCGっぽかったが、実写?)

などだ。

終わり方も、あれで良かったと思う。
すべてがキレイに片付くことなどあり得ないわけだし。
とにかく、もっともっと観ていたいと思った映画は久しぶりだった。

まだ観ていない人、観たほうがいいですよ!!