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福山と役所の対比が黒澤明っぽい 『三度目の殺人』72点

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退屈な絵が続いたが、さすがは福山雅治役所広司
福山は顔が写るだけでなんとか映画を引っ張っていくし、役所広司も「あ、こいつ危ないかも」と「ものすごく考えてる人なのかも」の中間をいく演技が見事だった。
是枝監督は、映画のなかで数回、これ見よがしの絵作りをする。
今回は、福山の夢(雪の中)と、最後の面会(ガラスのなかで福山と役所広司の顔が重なる)。これは黒澤明の『天国と地獄』の最後で三船と山崎努の顔が重なる場面を踏まえての演出なのだろうか。
いずれにせよ、面会の場面は長すぎて、「絵」にも監督の「ドヤ顔」が見える気がした。ちょっと反応に困る。

役所広司が二回目の殺人をした理由は、広瀬すずを救うため(あるいは悪を裁くため)であり、土壇場で無罪を主張したのも広瀬すずを守るためだったーーー、と読むのが自然だし、福山はそのように考えるわけだけれど、役所広司はそれも曖昧にはぐらかしてしまう。
こうした「真相」を明示しないという手も、まあ余韻が残るし、それはそれで良いのかなと思うが、でも「ないものねだり」がしたくなる。
「真相」を明示せずに余韻を残すのは良いが、余韻を残すことによって、どのような問題意識が浮き彫りになるのだろう。
司法制度と人間精神の齟齬? まさかそういうことではないだろう。それならもう少しそういう会話をさせるべきだ。
死刑制度? いやあ「三度目の殺人」というタイトルだからといって、そういうわけでもない気がする(でも、役所広司が、自ら死刑にもっていくあたり、そしてそれに福山も手を貸すあたりは、良かった)。
そのあたりが明確に受け止められないので、単に「曖昧に終わらせるために曖昧にした」という「手法のための手法」にみえてしまったのが残念。
したがって、65点と言いたいが、役所広司が一回目に殺人したときのことをもう少し掘り下げるべきだと思ったのでマイナス10点
福山の娘のエピソードはバッサリ切るべきなのでマイナス3点
福山雅治が好きなのでプラス10点(福山になら掘られてもいい)。
役所も好きなのでプラス10点。
で、計72点

ちなみに、役所広司は名字が覚えやすいが、書きにくい。
「福山が」という風に呼び捨てにして書くことは簡単だが、「役所が」と呼び捨てにすると、たとえば「やっぱ役所が大好き」という表記になり、公務員礼賛ブログになりかねない。