野心作だが、やや冗長、とても散漫 『バンコクナイツ』61点


富田監督の『国道20号線』は忘れがたい名作。
その後の『サウダーヂ』は見逃してしまい、残念な思いをしたので、今回の『バンコクナイツ』は期待して行った。
勝手に期待していただけなのだが、ちょっとキツかった・・・

娼婦・貧困・植民地・ベトナム戦争・クズの日本人という要素が詰め込まれているが、なかなか話が進んでいく感じがしないのだ。

もちろん、名作『国道20号線』だって、話はあってないようなものだと思うが、『バンコクナイツ』の場合は、(感覚的にいうと)「画が物語のドライブを求めているのに、製作者たちがそれを求めていない」のだろう。


では、物語のドライブを求める画、とはどのような画なのか?
たとえば、夜のバンコクの高架道路を、娼婦ラックが乗ったトゥクトゥクが疾走する場面。
ラックの故郷で、主人公たちが夜の町をバイクで移動する場面。
バックパッカーたちが戦争の跡が残る大地を歩く姿を空撮で撮る場面。
タイに遊びに来たクズの日本人たちも、貧困にあえぐ村からバンコクに身体を売りにきた女性たちも移動している。
こうした印象的な「移動」の場面が多く、「ああ、いい映像だなあ」と感じるのに、物語は非常に散漫で、退屈だった。
高いハードルに挑もうとしている気概はよく伝わってきたし、とても貴重な試みだと思うのだけれど、失敗作だ。

それでも、ものすごく良かったのは、劇中に流れる音楽だ。
田舎町のバンドが演奏していた曲は、歌詞が字幕で流れて、グッと来た。
ラックの田舎で、宗教者のおばはんが語りながら歌うような場面があったが、ああいった場面もドキュメンタリー的なリアリティが溢れていて、忘れがたい。

あと、ナントカとかいう名前の伝説上の龍が川に現れる場面。
そっけなさすぎる。贅沢な使い方と言えるが、やはりもったいない。

 

ちなみに、キネマ旬報の2017年2月下旬号のレビューを見たら、また中条とかいう人がテキトーな褒め方をしていて、ウンザリ。褒めるのも雑誌の重要な仕事だと思うが、とってつけたような褒め方。手抜き。
でも、五所純子さんの評論には、我が意を得たり!特に、最後の方のラックのビンタについてのコメントはほんとその通り。この人の文章をもっと読みたいと思った。