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そもそも巨大なゴリラという発想に乗れない 『キング・コング 髑髏島の巨神』51点


ゴジラ(2014年のほう)』が好きだったので、同じシリーズときいて楽しみにしていたが、フツー。
同じ監督だと思ってたら、違ったし。

あらためて2014年の『ゴジラ』の面白さに気づかされた。
そもそも、ゴジラは作品ごとにゴジラの形状が大きく変わるので、「今回のゴジラはどんなゴジラだろう」という楽しみがあるが、キング・コングの場合、それが皆無だとは言わないにしても、やはり薄い。ゴリラだし。

で、この映画はというと、かなり早い段階でコングが出てきて、「お、これは面白いかも」と期待するも、そこから話は髑髏島にいくパーティの紹介になる。ヒトクセもフタクセもありそうなメンバーを集める場面は、こういう映画の見どころだと思うが、なぜだろう、ツマラナイ。


あっ、と思ったのは、ブラボー作戦に代表される南太平洋でのアメリカによる核実験が、実は巨大生物を倒すためだったのかもしれない、という解釈が示されていたこと。これは、2014年のゴジラと同じだと思った。
時代設定は、ベトナム戦争終結(アメリカからみれば敗北)直後。
だからなのか、髑髏島でアメリカのヘリがバタバタとコングにやられる場面は、「アメリカへの祟り」を思わせて、ウーンと考え込んだ。なぜかというと、どうせベトナム戦争を意識するなら、もっともっと過酷な「行軍」を描くべきだと思うのに、本作はどこか楽しいからだ。いや、キングコングだし!エンタメだし!と開きなおり切れていないように思う。

それでも、密林が焼けていく緑と赤のコントラストや印象的な夕日など、ベトナム戦争映画で観たイメージのremix感は良い。ニクソンの人形の使い方も笑った。

 

ただ、非常に散漫な脚本が、どうしても気になる。

せっかくの巨大生物たちがあまり行かされておらず、お化け屋敷的な興味しか引かない。ボス的な地底のトカゲも、エヴァの使徒にしか見えず、ビジュアル的な面白味にかけた。
白鯨のエイハブ船長よろしく、異常にコングにこだわるサミュエル・L・ジャクソンの狂気も、おもしろいが凄みが出ていないように思った。

気になるといえば、中国人キャスト。
レジェンダリーは中国資本の傘下にあるからか、どう考えても物語に必要ない女性キャストが配置されている。
ああいう使い方は、俳優にも失礼だし、印象も悪いから逆効果だと思った。
とはいうものの、たとえばハリウッドの大作(?)に日本人キャストが起用されれば、日本のメディアはほぼ間違いなく大きく報じるし、それによる宣伝効果もあるだろうから、経営側としては必要なのかもしれない。商売だからなあ。

そういえば、残留日本兵「イカリ・グンペイ」なる人物と米兵との友情という要素も、「これ必要?」って感じがした。監督が日本のサブカル好きらしいので、監督なりの日本文化への敬意だったのだろうか?

とにかく、肝心のキング・コングに魅力がなかったのが残念。
ゴジラに較べるとコミュニケーション可能な感じがするので、味方っぽくて怖くないのだ。

忘れがたいのは、米兵の一人が爆薬を持って怪物と心中を図るシーンの、無慈悲っぷり。
ああいうのがもっと続かないと、観客が登場人物たちの絶望感を追体験できないので、悪い意味で「安心して」観てしまう。