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『マイルス・デイビス 空白の5年間』 76点

ジャズは全然わからないけれど、そのかっこよさに惹かれて、大学の時にいろいろ聴いた。
「わからないのにかっこいい」と思えたのはなぜかというと、当時読んでいた中上健次村上春樹がジャズを褒めていたからだ。
一種の「教養」として「勉強」しようとして、一週間くらいでやめた。
その一週間で聴いたCDのなかに、マイルス・デイビスは当然入っていた。

それだけなら別によくある話で、わざわざこの映画を観に行くことはなかっただろうが、ドン・チードルが監督・主演していると知り、気になったのだった。
ドン・チードルは、大学の時の授業で観た『クラッシュ』や、大学のときのバイト仲間と観た『ホテル・ルワンダ』以来、あの目と鼻と口が気になっていた(52才だとは!)。

というわけで『マイルス・デイビス 空白の五日間』を観た。
「才能ある人間が駄目になっていく」という話が好物なので、面白く観ることができた(正確には「駄目になっていた時期」であり、その後復帰している)。

劇中で、ドン・チードル演じるマイルスが「昔のファンは、昔の俺の演奏が好きだが、俺は変わり続けている」というようなことを言っていた。
それは確かにそうだが、たとえば昔の「乾杯」を聴きたいのに、今のナガブチの「乾杯」を聴かされてしまうとそれはそれでガッカリするのも事実。

ここで、あえて、作り手側になって考えてみる。
どこに行っても「あの曲を(あの時のままで)やって」と言われると辛いだろう。
「それならCDでええやんか」と言いたくなるかもしれない。
そう思うと、ドン・チードルが演じるマイルスの気持ちもわからなくもない。

良かったシーンはいくつもあるが、「現在」と「過去」のマイルスが交錯する場面が印象に残っている。特にボクシングの試合の場面。

撮り方以外にもグッと来たのは、クラウドファンディングで資金を集め、取材と役作りに心血を注いだドンチー(略)の情熱だ。
「僕、マイルス・デイビスが大好きなんです」というのが伝わって来て、ちゃんと「マイルス」が憑依していた。
ローリングストーンズ誌の記者役のユアン・マクレガーも良かった。

ただよくわからなかったのが、70年代後半のマイルスのファッション。
なんか原色のキラキラで、アースウインド&ファイアーの人みたいな感じ(ファッションに詳しくないのでわかりません)

 

もっと知りたいと思った点もある。

マイルスは、自身の音楽を「ソーシャル・ミュージック」と呼んでいたとのことだが、なぜそのような発想に至ったのか、知りたい。

 

原題は『MILES AHEAD』で、邦題よりも、そっちの方がいいだろう。
日本で英語教育が進んだ十年後くらいには、英語圏の映画は英語表記のままで公開される日が来るのかもしれない、などと思った。

話は完全に変わるが、この二年くらい、10代半ば向けの恋愛邦画が多い。
あの流れははやく終わればいいと心から願っている。