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『この世界の片隅に』 89点

「15年戦争」とか「アジア・太平洋戦争」とかよばれるあの戦争の末期。
その時代を想像するとき、私たちは「暗い谷間の時代」として思い起こしがちだ。
人びとは、不本意な戦争に「まきこまれ」、それでも不平不満はあからさまに言えず、粛々と国家の滅亡に同伴した・・・
しかし、そんなに単純ではないということは、少し考えればわかる。
生きている者たちは、いつの時代も、基本的には自分の周囲50メートルくらいの現実を必死で生きることしかできない。時折、通信や交通といったインフラや想像力によって50メートルを超えることはあっても、やはり基本的には50メートル以内の生活圏で生き死するものだ。
一般論だが、必死で生きるなかには、楽しいことも辛いこともあるだろう。
辛いときにも、その状況を自分の手で変えられない場合は、なんとか日常に楽しい点を見出して生きていくしかない。

その切実な努力(当人たちは努力だと思っていない場合も多い)を、この映画は克明に描いていた。
私がこの映画を良いと思う理由のほとんどは、そこにある。

主人公が絵が好きだというのも、この切実な努力を彩っていたように思う。
絵を描くこと。
手を動かして現実を捉えること。
デフォルメして色を塗って現実を相対化すること。
それは(ぼんやり・おっとりしている)主人公が、彼女なりに現実と向き合う手がかりだ。
だから主人公が、右手を失うのが、悲しい。

ほかにもいろいろ言いたいことはあるが、頭が痛いので今日はこの辺で。
また後日書き足したい。