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映画メインで諸々の感想を

世間の高評価に納得 『シェイプオブウォーター』91点

幼少期に声帯を切られた上に捨てられた中年女性と、研究用にアマゾンから連れてこられた「魚人(?)」の恋の物語。冒頭の数分、主人公の日々が「同じことの繰り返し」であることが端的に示されている。いつもと同じ時間に起き、風呂に入り、同じバスにのり…

20分くらいの短編映画にすべき 『15時17分、パリ行き』53点

イーストウッド監督作はいつも評価が高く、熱心なファンが多い。『父親たちの星条旗』みたいな大作も作れば、『グラントリノ』のような佳作も撮る。俳優としてはもちろん、監督としての評価ももはや揺るぎないわけだが、今回はいかがなものか。 列車内でのテ…

みんな踊り出す 『グレイテストショーマン』78点

ミュージカルの評価は簡単と言えば簡単だが、難しいと言えば難しい。簡単だと思う理由は、歌とダンスを楽しめたかどうか、で判断したらいいと思うからだ。では、歌とダンスが良かったら物語はどうでもいいのか。物語を考慮にいれると、とたんに評価は難しく…

「答えのある映画」と「答えのない映画」 『デトロイト』86点

画面に緊張感がみなぎっていて、冒頭の実写シーンから「あ、これはちゃんと観ないと」と思わせる力がある。 わざわざ「冒頭の実写シーン」と書いたのは、この映画が、アニメーションによる黒人の歴史の概観から始まるからだ。 実をいうと、ここで「ん?説教…

めちゃくちゃ面白かった 『スリービルボード』95点

アクションエンターテイメントやホラーや恋愛物語もいいけれど、どこか物足りないと感じることが多い。だいたい結末が何パターンかに絞られてしまうからだ。小説でも、エンタメと文学では、それぞれ良いところがある。 でも、後者がやはり面白いと思うのは「…

福山がカッコよければ細かいことはどうでもいいのだ 『マンハント』68点

『君よ憤怒の河を渉れ』は観ていないが、大味なエンターテイメントなのだろうと勝手に想像。そのリメイクなのだから、トンデモ系だろうと推測せざるを得ないが、それでもジョン・ウーと福山雅治の魅力には抗しがたく、観に行った。 まず気になったのは、外国…

今年のがっかりNo1 『ダークタワー』16点

スティーブン・キングは、読んだ作品こそ少ないけれど、尊敬する作家の一人だ。40年くらい書き続けて、第一線を走り続けているというのは、凄いの一言につきる。しかし、作品数にくらべると映画化は成功していないようだ。そういえば、いつか観た『IT』も残…

「(喪黒福造+夜神月)÷2」を学芸会レベルでやるとこんな感じか 『不能犯』13点

マンガ原作を実写映画にする場合の駄目な例を見せてもらった。「愚かだね人間は」とか「希望であなたを殺す!」とかいう台詞は、絵と文字で表現するマンガならば成立しても、生身の人間にそのまま言わせたらものすごくダサくなる。それを避けるには、リアリ…

帯に短し襷に長し 『ネイビーシールズ ナチスの金塊を奪還せよ!』65点

原題はrenegadeどういう意味かと調べたら、裏切り者とか背教者とかいう意味だった。このタイトルは映画の趣旨とはややズレているように思ったので、邦題で工夫しようとしたのは頷ける。しかし、なんともフツーな邦題だという感じは否めない。そして実際、映…

怖いと言うより笑える。子どもたちの演技は素晴らしい 『イット』46点

スティーブンキングは中学高校のときに何冊か読んだことがあって、その時にブックオフで『IT』を買ったはずだが、読まずに本棚にいれたままだ。いまも実家にあるはず。とにかく、「買ったけど読んでいないキングの大作」として頭の片隅にあったから、今回の…

ちょっとテレビっぽいのが気になる「大作映画」 『密偵』75点

ワーナー・ブラザーズ・コリアによる第一作。 韓国では三週連続で興行収入第一位ということで、たしかに力作にはなっていた。 ソン・ガンホとイ・ビョンホンのスターと、若手最有力株のコン・ユというキャスティング。日本統治時代の独立運動という大きなテ…

「デッカード」はユニクロっぽいTシャツを着るか? 『ブレードランナー 2049』68点

宣伝の段階では全く期待していなかった。ポスターがダサかったからだ(ハリソン・フォードが着てる服がユニクロにしかみえない)。 ムツカシイことを言うのが好きな人は、「人間とは何なのか? レプリカントを通して問いかけている」とか言いそうだが、それ…

CIAはデウス・エクス・マキナか 『アトミック・ブロンド』54点

シャーリーズ・セロンは綺麗で強く、音楽はかっこいい。映画のなかのニュースで、音楽の話題として「サンプリングの是非」のコーナーがあったが、わざわざそんなニュースをピックアップするあたりが憎い。個性的なスパイたちが騙し、騙され・・・的な展開も…

もっとバカになれ! 『バリー・シール/アメリカをはめた男』 54点

監督と主演が『オール・ユー・ニード・イズ・キル』と同じだと言うことで気になっていた。要は、CIAとコロンビアの麻薬組織にうまく使われて(自分ではうまく両者を使いこなしたと思い続けて)、最後は殺された犯罪者の「事実に基づいた物語」(BY戸田奈津子…

B級映画の最高峰(ただし映画館で観るべし) 『新感染』93点

移動し続けている映画は、それだけでなんかワクワク。『マッドマックス 怒りのデスロード』は車で、ポンジュノの『スノーピアサー』は電車で、ほぼずっと移動していたから、あんなに良い映画になったのだと信じて疑わない私である。思えば、中上健次はどこか…

福山と役所の対比が黒澤明っぽい 『三度目の殺人』72点

退屈な絵が続いたが、さすがは福山雅治と役所広司。福山は顔が写るだけでなんとか映画を引っ張っていくし、役所広司も「あ、こいつ危ないかも」と「ものすごく考えてる人なのかも」の中間をいく演技が見事だった。是枝監督は、映画のなかで数回、これ見よが…

ダークヒーロー系映画の良作 『皆はこう呼んだ、鋼鉄ジーグ』71点

日本のアニメから着想を得たイタリア映画ということで、気になっていたが、ようやく観ることができた。上映前の館内にはアニメ主題歌が流れていて、いい感じ。 主人公が住む町は30年前くらいにできた郊外のニュータウン的な場所だ(名前は忘れた)。主人公…

今年1番 『マンチェスター・バイ・ザ・シー』94点

ネット上で、監督が本作の結末を「ハッピアー・エンド」と呼んでいた。 強引な「ハッピー・エンド」ではなく、冒頭と比べると少しだけ幸せになっている、という意味だろう。とってつけたような完全無欠の幸福は、夢でしかない。夢を振りまく映画のなかにも、…

フツーすぎる。監督の力量不足。 『ライフ』54点

前情報でエイリアン映画だと知り、観に行く気持ちになった。 「密室」である宇宙ステーションでの人間VSエイリアン。もちろんハラハラ・ドキドキするだろうし、それも楽しみなのだが、ジャンル映画ならではの楽しみ方というものある。 今回は、次のようなこ…

『ひるね姫』よりはマシ 『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:リミックス』28点

前作はDVDで観て、楽しかったんです。 音楽の使い方が上手で、バカっぽい演出も楽しく、肩の力を抜いてみることができるエンターテイメントとして、それなりに良い思い出になってるんですよね。いやあ、ほんとうに、いい映画でしたね。 で、今回のリミックス…

上半期の収穫 『22年目の告白』 81点

気分転換になるような、ボーっと眺めるような映画がいいなあ・・・ と思って、ほとんど情報がないまま映画館へ。なんか思った以上に若い人が多くて、「あれ、間違ったかも」と早くも焦り気味。「そういえば、俺は藤原竜也がいい感じで映っているのを見たこと…

変な映画 『ハクソー・リッジ』 74点

沖縄戦が描かれると知って、観に行った。 宗教上の理由で良心的兵役拒否者になることを選んだが、パールハーバー後に愛国心から志願して兵士になった主人公。しかし、武器は持たず、衛生兵として仲間を助けることで戦争に参加する。実話とのことで、「信念を…

円環の言葉と時間 『メッセージ』66点

最近なにかと忙しく、映画館に行く気になれなかった。 しかし、気分転換には映画が一番。携帯も切るし、余計なことは考えなくていい。 ということで、黒くて長くてデカい物体が浮いてるというヴィジュアルが強烈な『メッセージ』を観てきた(現代のアライバ…

野心作だが、やや冗長、とても散漫 『バンコクナイツ』61点

富田監督の『国道20号線』は忘れがたい名作。その後の『サウダーヂ』は見逃してしまい、残念な思いをしたので、今回の『バンコクナイツ』は期待して行った。勝手に期待していただけなのだが、ちょっとキツかった・・・ 娼婦・貧困・植民地・ベトナム戦争・ク…

画面がゴチャゴチャしてて、うるさい 『ゴーストインザシェル』43点

原作マンガは読んでいないが、押井守のアニメーションは観たことがある(記憶はあやふやだけど)。アニメーションに忠実な実写映画だと思った。原作マンガ(アニメーション)を実写化すると、ファンを含めて「これは違う!」というような異論が噴出するが、…

そもそも巨大なゴリラという発想に乗れない 『キング・コング 髑髏島の巨神』51点

『ゴジラ(2014年のほう)』が好きだったので、同じシリーズときいて楽しみにしていたが、フツー。同じ監督だと思ってたら、違ったし。 あらためて2014年の『ゴジラ』の面白さに気づかされた。そもそも、ゴジラは作品ごとにゴジラの形状が大きく変わるので、…

女が男をボコるシーンがもっと見たかった 『パッセンジャー』56点

宣伝で観たときは、宇宙船のなかで二人だけが目覚めてフォーリンラブだと思っていた。そういうのSFでありがちだよね~。藤子・F・不二雄にあったような気がする~。とか思ってたら、全然違った。 クリス・プラットが、ジェニファー・ローレンズを起こすかど…

短編小説のマスターピースのよう 『ムーンライト』83点

ストーリーを要約しても、ほとんど意味がない映画だと思う。 「黒人社会における同性愛を描いた青春純愛映画」としか言いようがないが、そうまとめたところで、この映画の良さは伝わらない。 強度のある物語構造だから、俳優たちが展開する細かい表情やしぐ…

制度はどこまで人を管理するのか 『わたしは、ダニエル・ブレイク』87点

大工の仕事を長年続けてきたダニエルは、心臓発作を起こし、医者から仕事を止められている。 ある日、ダニエルは雇用支援手当の継続のため、電話で審査を受けるが、結果は「就労可能、手当打ち切り」。今度は、「職業安定所」に求職者手当の申請に行く。しか…

象は歌がうまい 『SING』60点

かつては賑わっていたが、今は客が入らず、経営危機にある劇場。この劇場主がコアラだ(年齢不詳)コアラは起死回生のために歌のコンテストを企画。なけなしの金を集めて賞金1000ドルと銘打つつもりが、秘書をしているババアのカメレオン(トカゲ?)のミス…