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映画メインで諸々の感想を

今年のがっかりNo1 『ダークタワー』16点

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スティーブン・キングは、読んだ作品こそ少ないけれど、尊敬する作家の一人だ。
40年くらい書き続けて、第一線を走り続けているというのは、凄いの一言につきる。
しかし、作品数にくらべると映画化は成功していないようだ。
そういえば、いつか観た『IT』も残念だった。
今回の『ダークタワー』は、読んでないけれど、文庫本でⅠ~Ⅲは持っている。まだ高校生だった頃、地元のブックオフで買った角川文庫版は、読んでないけれど、思い出の本だ(現在は新潮文庫から出ているとのこと)。
で、スティーブンキングの小説の良い点は、子どもっぽいともいえる妄想力とそれを具現化する筆力にあるが、今回の映画『ダークタワー』は、子どもっぽさが悪い方に出ていた。

最近、すでに評価が高い映画ばかり観ていたので、クソかもしれないが自分で発掘したいなと思い、観に行った僕が悪かったのだ。

 

特に前半はきつかった。世界の説明のための時間が長く、まじで寝かけた。
作り手も前半の間延びには気づいていたようで、興味を持続させるために、大人と子どものチープな追いかけっこや、子どもがモンスターに襲われる場面をつくっていた。しかし、そんなことろで主人公が死ぬわけはないわけで、馬鹿にしてんのか?と感じながら死んだ目で鑑賞。
子役の顔はビミョーだし、肝心のガンスリンガーも頭悪そう。この時点では、悪役マシュー・マコノヒーだけが希望として残っていた。
後半は、ガンスリンガーが現代のNYにやってくるので、そのあたりのギャップは楽しく、もっと観たかったが、脚本・監督が無能なので話はサクサクすすむ。
で、ラストの対決。ようやくマシュー・マコノヒーの本領発揮かと期待が高まる。ちなみに彼は幻術使いという設定で、「逝け」と手をかざすだけで人を殺せたりする。ラスボスのマコノヒーは、どんなバトルをみせてくれるのか!?

しかし、マシュー・マコノヒーの攻撃は、謎のカンフー的ポーズで割れたガラスやパイプを飛ばすだけ。
これまで散々、もっとすごい「幻術」を使ってきたのに、最後の最後でそれかよ。
で、マコノヒーを倒すガンスリンガーの攻撃もショボかった・・・
カタルシス・ゼロ。

マシュー・マコノヒー出演作に駄作なしの法則が、ついに崩れた瞬間であった。
おい、監督と脚本家!真剣に作ったらこんなことにならないはずだぞ!!真面目にやれ!!!
あとスティーブン・キング、もうカネは十分あるだろうから、映画化を認めない方がいいと思うぞまじで。
(これはテレビでプロスポーツを観て「下手くそ」と野次る一般人と同じレベルでして、僕は映画もとれないし脚本もかけないので、基本的にはこの駄作の関係者も尊敬しています。どうか笑って赦して下さい)

「(喪黒福造+夜神月)÷2」を学芸会レベルでやるとこんな感じか 『不能犯』13点

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マンガ原作を実写映画にする場合の駄目な例を見せてもらった。
「愚かだね人間は」とか「希望であなたを殺す!」とかいう台詞は、絵と文字で表現するマンガならば成立しても、生身の人間にそのまま言わせたらものすごくダサくなる。
それを避けるには、リアリティラインを大きく下げて、「アベンジャーズ」的な荒唐無稽な話にするか、あるいは、明らかに現実味のない設定にする必要がある。たとえば、デスノートの悪魔みたいな奴をだすとか。
ところが『不能犯』はそのへんの工夫がない(強いて言えば赤く光る主人公の目と、その後のダサいCGがあるが、しかしあれはほんと安っぽい)ので、台詞がダサく、したがって俳優が全員アホに見えるのだった・・・人間って、もう少し複雑だと思うが、出てくる人間はみな安っぽく安易で、駒にしかみえない。それは脚本家の人間観が出ているんじゃないか。
加えて、演技力があきらかに足りない俳優が出過ぎ。
主要人物の沢尻エリカと松坂トウリは、アホに見えたがそれは監督のせいで、まあまあ頑張っていた。しかし、脇を固める連中が昼ドラやVシネマレベルの過剰にわかりやすい演技。
沢尻エリカの上司役のエクザイル風の兄ちゃん、下手すぎる!下手すぎて「もっと観たい」とワクワクした。あの人の演技のところだけ編集して、DVDを作って欲しい(絶対買わないけれど)。
現場でもう少しちゃんと指導すべきだと思うし、指導してあのレベルならば、そもそもなぜあの人を選んだのか・・・
脚本に問題があると思ったのは、なぜあの不能犯が死にたがっているのか、もう少し説明したほうがよいのではないかと思った。ギャグ系お笑い映画として観るのは、おもしろいと思う。矢田亜希子の雑魚っぷりは、もはやお笑いレベル。
とにかく、そんなやつおるか!の連続であった。現実味のない設定に、現実味を持たせるのがプロの仕事なのでは・・・?   
ということで、現時点で今年ワースト。

帯に短し襷に長し 『ネイビーシールズ ナチスの金塊を奪還せよ!』65点

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原題はrenegade
どういう意味かと調べたら、裏切り者とか背教者とかいう意味だった。
このタイトルは映画の趣旨とはややズレているように思ったので、邦題で工夫しようとしたのは頷ける。
しかし、なんともフツーな邦題だという感じは否めない。
そして実際、映画の内容も邦題に劣らずなんともフツーなのだった。

金塊をめぐる歴史の絡ませ方、金塊の奪い方、緊張の作り方など、非常によく練られた脚本だが、目新しさは全くない。
秀才タイプの監督と脚本家で、きっとテレビシリーズものなどを手がけると手腕を発揮するスタッフなのではないか。
そう、なんだかテレビっぽいのだ。
なぜだろう・・・と考えたが、一つは華がないということだろうか。
スクリーンの大画面で見るには、俳優たちに個性を感じなかった。
それは単に俳優の顔だけではなくて、脚本上でも登場人物たちの個性が薄かったと思う。
主人公は子どもを交通事故で亡くしていて・・・みたいな設定が後半で語られるが、別にそれがストーリーにからむわけでもないし。

旧ユーゴの紛争に入った米軍の話で、時代は1995年なのだが、別に脚本でそれが深められるわけでもない。
いつの時代のどこの国を舞台にしても成立する話で、そのあたりも「まあ上手に作ってるけど・・・それ以上のなにかはないよな」という不満を持った。

にもかかわらず65点という評価を下したのは、いつ誰が見ても60点くらいの評価を得られるモスバーガー的な普遍性(マクドとは言わない)があるというのが、面白いと思ったからだ。面白くないけど、上手に作られたアクション・アドベンチャーって、もっとたくさんあっても良いように思う。

この映画は、フランスとドイツの合作で、にもかかわらず主人公たちをアメリカ人に設定している点も興味深かった。
映画のなかでステレオタイプ化されたアメリカ人を描くのは、別にアメリカ映画の特権じゃないということを思い知ることができた。
それもやはり普遍的な「浅さ」だろう(浅いとか言うとネガティブに捉えられるかもしれないが、ポジティブに評価しています)。

製作と脚本にリュックベッソンの名前があって、それもなんだか意外だった。
一時期熱心に祭り上げられていたリュックベッソンだが、まだ生きてたのかというのが正直な感想。広末が出てたWASABI(ワサビ!!!)のプロモーションで来日した映像を見て以来、久しぶりに彼を意識した。
リュックベッソン映画作家として才能がないのは明らかだが、名前があるので馬鹿から金を集めることはできるだろうし、面白くないが形の整った脚本も書けるようだから、是非とも「現場に口を出さないプロデューサー」として、熱意ある人びとにチャンスをあげて欲しいと願う。

ちなみに、この前の『ブレードランナー』に「ラブ」役で出てた女優さん(海辺でゴズリングと殴り合い)が、笑顔が素敵なヒロイン役で出ている。笑顔が素敵でした。

怖いと言うより笑える。子どもたちの演技は素晴らしい 『イット』46点

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スティーブンキングは中学高校のときに何冊か読んだことがあって、その時にブックオフで『IT』を買ったはずだが、読まずに本棚にいれたままだ。いまも実家にあるはず。
とにかく、「買ったけど読んでいないキングの大作」として頭の片隅にあったから、今回の映画化にも飛びついた。

肯定的にもとれるし、否定的にもとれる、そういう映画だった。
否定的な面からいうと、キングの小説そのものが(いやホラーというジャンルそのものが)そうなのかもしれないが、恐怖描写が「なぜそうなるのか」が、全く説明されない。
なぜ、あのピエロが神出鬼没なのか、バスルームの排水溝から大量の血が噴き出すのか(なぜ大人には見えないのか)、全然わからない。
でも、それはある意味で当然で、説明できたら怖くもなんともないし、仮に説明ができてそれが怖いのであれば、それはサイコサスペンスやミステリーと呼ばれるジャンルに属することになるのだろう。ホラーというのは、基本的にわからないから、説明できないから、ホラーなんだろう。

先に、なぜあのピエロが神出鬼没で、バスルームの排水溝から大量の血が噴き出すのか(なぜ大人には見えないのか)、と書いた。この点については、肯定的な評価もできる。
「子どものときだけに感じることができる恐怖」を可視化したものだと思えば、ピエロをはじめとするモンスターがいろんなところに出てくるのも、うなずける。大人が見えないのもうなずける。
たしかに、大人になってしまうと感じることができない恐怖感というものはある。子どもの頃は、暗いというだけで夜道が怖かった。お昼でも、薄暗い建物は怖かった。そういう怖さを、大人でもわかるように「翻訳」すると、この映画のようになるのかなと思った。

要は、子どもたちだけが感受できる恐怖を、大人も楽しむ映画としていかに「翻訳」するのか、その方法が問題なのだ。
それを考えながら、この映画の描写をみると、お粗末というほかない。
音で驚かせる演出があまりに多いのは残念だった(それは「ビックリした」のであって怖いわけではない)。
また、奇声を発してピエロが近づいてくるのだが、第一ピエロが全然怖くなくて、ギャグなのかな? と思う。
結局、この映画が提示してくれる怖さとは、「大きな音が鳴って、モンスターが近づいてきて、画面のなかの子どもたちが怖がっている絵を見ている」という、その繰り返しなのだ・・・
ピエロ以外のモンスターも、小学生レベルの造形で、発想が貧困なのか、技術がないのか、よく分からないが、とにかく映像化は失敗だな、としか思えなかった。

そもそも、あのピエロ、バカにしか見えないし。それならマクドナルドのマスコットキャラクターのほうが絶対怖い。「怖そうな顔」がわかりやすすぎて面白くない。

 

それでも、子どもたちの演技はとても頑張っていて、その点にだけ好感。
子どもたちは、吃音だったり、近眼だったり、病気だったり、肥満だったり、家庭環境に大きな問題を抱えていたりする。
彼らは学校でも「さえないやつら」と見なされて「負け犬」と呼ばれ、いじめの対象になっていたりする。
そうした子どもたちが、団結して困難を乗り越える過程そのものは、爽快だった。
それがこの映画の救いだ。

ちょっとテレビっぽいのが気になる「大作映画」 『密偵』75点

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ワーナー・ブラザーズ・コリアによる第一作。

韓国では三週連続で興行収入第一位ということで、たしかに力作にはなっていた。

ソン・ガンホイ・ビョンホンのスターと、若手最有力株のコン・ユというキャスティング。
日本統治時代の独立運動という大きなテーマ。
日本の警察で出世を続ける朝鮮人(ソン・ガンホ)の苦悩や、独立運動の闘士(コン・ユ)の強い意志などの見所も満載。しかし、その割にはどこか重厚さに欠けた。

思うに、脚本がごちゃごちゃしすぎている。
祖国と日本との間で引き裂かれるソン・ガンホのパートだけで良かったんじゃないか。
二重スパイになるかどうかの逡巡や、祖国を思う独立運動家たちを警察として取り締まらねばならないという悲しみだけで、じゅうぶん面白いはず。

しかし、映画はわりとコン・ユにも時間を割く。
コン・ユが大好きなので、それはそれでいいし、コン・ユが電車をいったりきたりする場面では『新感染』の良い思い出がよみがえって楽しかったのだけれど、結果としてはコン・ユとイ・ビョンホンの存在が映画の完成度をそいだと思う。
たとえば、次の場面。
コン・ユは表向きには写真館を経営している。思いを寄せる女性活動家がいて、彼女の写真を撮ってあげるのだが、自分が撮ったその写真が原因で、彼女が逮捕されてしまうという悲しい場面。
この場面は、もっと二人が互いを思い合う描写があれば、効いたと思うが、現状ではなんかとってつけたような感じしかしない。
さらに、独立運動に関わる秘密組織のなかに一人裏切り者がいるのだが、その人物が裏切っていたというショックが、全然伝わらない。なぜかというと、その人物に関する描写がほとんどなかったから。

とはいうものの、この独立運動家たちをしっかり描かないことには、終盤でソン・ガンホがその意思を継承して爆弾テロを決行するあたりの説得力も失われてしまう。
このあたりが、大作歴史エンターテイメントの難しいところか。

とにかく、人間描写の積み重ねが中途半端だったので、その結果、やたらと大仰で深刻な顔をしている俳優たちと、観客の距離が開いたままだった。

 

と、ネガティブなことを書いたが、ソン・ガンホの役どころには考えさせられる。

祖国が日本帝国の支配下にあるなかで、「自分はどのように生きるのが誠実なのか」と問い続けている表情が絶妙だった。

結果、ソン・ガンホ独立運動家たちの意思を継ぐわけで、その意味では韓国の「愛国」映画だと言える。ただし、「愛国」といえばなんでもかんでも悪いわけではない。植民地解放闘争を抱えた20性器の世界を再考するための手がかりに満ちたエンターテイメントだと評価して、65点をつけた。

あとはコン・ユが出ているのでプラス10点。今後もコン・ユという俳優には甘い態度で臨みたい。

「デッカード」はユニクロっぽいTシャツを着るか? 『ブレードランナー 2049』68点

宣伝の段階では全く期待していなかった。
ポスターがダサかったからだ(ハリソン・フォードが着てる服がユニクロにしかみえない)。

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ムツカシイことを言うのが好きな人は、「人間とは何なのか? レプリカントを通して問いかけている」とか言いそうだが、それは手塚治虫でじゅうぶんです。そういうことよりも、「これまで見たことがない映像」を期待して映画館に足を運んだのでした。

その意味でいうと、半ば期待外れだった。

まず、期待を上回った点から。

ものすごく良いと思ったのは、「デッカード」に会いに行って、一緒に酒を飲むあたりまでの画面。
オレンジ色っぽい画面が綺麗なのが素晴らしい。

ラスベガスの出し物(プレスリーやマドンナをリアルに再現する立体的なプロジェクター)が壊れてて、そこで殴り合う場面もよかった。
二人が交わす『宝島』トークも、なんかいい感じ。

あとはさまざまなガジェット。ウォリス社の社長の周りに浮いてる黒い石みたいなのとか、なんかワクワクした(でも、社長が耳の後ろにUSBみたいなの差し込んでるのは、なんかアナログでした)

 

期待外れだった点は以下のとおり。

レプリカントが子どもを産んで、その「奇跡」の謎を・・・とかいわれてもなー、なんかもうその時点で乗れなかった。
しかし、そもそも前作の『ブレードランナー』も、熱心なファン意外は微妙だと思っていたわけだから、前作並といったところか。
「ジョイ」という、ウォリス社が作った部屋の中だけの女の子が壊された怒りを、もっと爽快に晴らして欲しかった。

あと、「K」の上司の「ジョシ(ダジャレっぽいが)」がバカなのもどうか。「K」が「子どもは処分しました」って言ったらそのままアッサリ信じていた。いくらレプリカントが嘘をつかないとはいえ、普通は証拠を求めるやろ!あの上司は無能。ドヤ顔で酒を飲んで「K」にたいして思い出を語るように命令するところとか、ハラスメントやし。

もっと魅力的に描けたんじゃないかなと残念だったのは、ゴミ処理場になっているサンディエゴ。なんかどこかでみたことあるような荒廃感で、正直退屈だった。もっと変な武器とか、変な習慣・ルールを見せて欲しかった

 

ガラガラだろうと思って映画館に行ったら、意外と混んでいたのが驚き。話題性はあるからなあ。
右隣が女性二人組で、うち一人は明らかに映画が興味なさそうで、途中で携帯を触り出したので辛かった。
確かに、やや長いかなと思ったけれど、携帯は止めてくれ・・・

 

「K」にライアンゴズリングを配役したのが良かったと思う。「能面」って感じの彼の顔が役に合っていた。
「ラブ」という名前の敵キャラも良かった。
演出で気に入ったのは、記憶を遡って木馬をゲットするところ。
「K」が「デッカード」の子どもだと確信してしまった。うまく騙された~。

 

CIAはデウス・エクス・マキナか 『アトミック・ブロンド』54点

 シャーリーズ・セロンは綺麗で強く、音楽はかっこいい。
映画のなかのニュースで、音楽の話題として「サンプリングの是非」のコーナーがあったが、わざわざそんなニュースをピックアップするあたりが憎い。
個性的なスパイたちが騙し、騙され・・・的な展開もおもしろい。
おもしろいだけに、どうしても許せないのがラスト。
結局はCIA善玉史観で片付けてしまう底の浅さが残念だった。
CIAのラストに拒絶感を持ってしまったのは、『バリー・シール』を観たばかりというのも、関係しているかもしれない。
画面のかっこよさと予想外の展開に魅了されて、こっちがバカになった瞬間に「アメリカ万歳」を吹き込まれたようで、不快だった。

絶賛している人は多いが・・・どうなんだろう。
でも、かっこいい。それは間違いない!

だから『バリー・シール』と同点!!